この記事は 事務でよく使うExcel関数まとめ|目的から探せる一覧 の1本です。他の関数もまとめて見られます。
式を1行だけ入れたときは合っていたのに、下にコピーしたら途中から結果がおかしくなった。
Excelを使っていれば必ず一度は経験します。原因は式の中身ではなく、参照が一緒に動いてしまっていることです。
これを止めるのが $(ドル記号) です。関数ではありませんが、これを知らないと関数が正しく動きません。ここまでの記事で何度も「詳しくは別記事で」と書いてきた部分を、まとめて扱います。
まず、何が起きているのか
消費税を計算する表です。税率をB1に書いて、各行で掛け算しています。
| A | B | |
|---|---|---|
| 1 | 項目 | 金額 |
| 2 | 消費税率 | 0.1 |
| 3 | ||
| 4 | 杉板 | 60,000 |
| 5 | 檜柱 | 76,000 |
| 6 | 合板 | 27,000 |
C4に =B4*B1 と入れて、下にコピーします。すると、こうなります。
| A | B | C | |
|---|---|---|---|
| 1 | 項目 | 金額 | 税額 |
| 2 | 消費税率 | 0.1 | |
| 3 | |||
| 4 | 杉板 | 60,000 | 6,000 |
| 5 | 檜柱 | 76,000 | 0 |
| 6 | 合板 | 27,000 | 0 |
式は消えていません。数式バーを見ると =B6*B3 になっています。
書いたのは =B4*B1 でした。下に1行コピーするたびに、掛ける相手の B1 も一緒に下へ動いてしまったのです。B2、B3 は空欄なので、掛け算の結果が0になります。
これがExcelの標準の動き(相対参照)です
Excelは式をコピーすると、参照先も同じ方向に動かします。
「1つ下の行にコピーしたなら、参照も1つ下だろう」と判断する仕組みです。
金額の列(B4→B5→B6)は、これで正しい。
税率(B1)は、動いてほしくない。
動いてほしいものと、動いてほしくないものが混ざっているのが問題です。
$ は「動くな」という指示
参照の前に $ を付けると、その方向には動かなくなります。
- B4行も列も動く(コピーするとB5、B6…と付いてくる)
- $B$1行も列も動かない(どこにコピーしてもB1のまま)
これで直ります。
| A | B | C | |
|---|---|---|---|
| 1 | 項目 | 金額 | 税額 |
| 2 | 消費税率 | 0.1 | |
| 3 | |||
| 4 | 杉板 | 60,000 | 6,000 |
| 5 | 檜柱 | 76,000 | 7,600 |
| 6 | 合板 | 27,000 | 2,700 |
$ の付け方は4通り
$ は列の前と行の前に、別々に付けられます。
| 書き方 | 意味 | よく使う場面 |
|---|---|---|
A1 | 行も列も動く | 同じ行の中での計算 |
$A$1 | 行も列も動かない | 税率・単価など、1か所に書いた値を全体で使う |
$A1 | 列だけ固定(行は動く) | 右にコピーしても、見る列を変えたくないとき |
A$1 | 行だけ固定(列は動く) | 下にコピーしても、見る行を変えたくないとき |
$ は「すぐ後ろを固定する」と覚えてください
$A1 → $ の後ろは A なので、列が固定A$1 → $ の後ろは 1 なので、行が固定
どちらを固定したいかで、$ を置く位置が決まります。
F4キーで切り替わります
$ を手で打つ必要はありません。
- 数式バーで、対象のセル番地をクリックする
B1の部分にカーソルを置くか、ドラッグして選びます。 - F4 キーを押す
押すたびに
B1→$B$1→B$1→$B1→B1と切り替わります。 - 欲しい形で止めて、Enter
これだけです。
ノートパソコンでは Fn+F4 のことがあります
F4キーが音量や画面の明るさに割り当てられている機種では、
Fn を押しながら F4 を押してください。
反応しない場合は、$ を直接キーボードで打っても同じです(Shift+4)。
縦横に広がる表では、片方だけ固定する
$B$1 のように全部固定すれば安全、と思いがちですが、それでは困る場面があります。
担当者別・月別の集計表を作るとします。式を右にも下にもコピーしたい形です。
| A | B | C | D | |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 担当 | 9月 | 10月 | 11月 |
| 2 | ||||
| 3 | 田中 | 5 | 3 | 4 |
| 4 | 佐藤 | 2 | 6 | 1 |
| 5 | 鈴木 | 4 | 2 | 3 |
ここで使っている固定のしかたです。
| 部分 | 書き方 | 理由 |
|---|---|---|
| 担当者名 | $A3 | 列だけ固定。右にコピーしても、担当者はA列から読む。下にコピーすると次の担当者へ |
| 月 | B$2 | 行だけ固定。下にコピーしても、月は2行目から読む。右にコピーすると次の月へ |
| 参照する範囲 | $B:$B | 両方固定。どこにコピーしても同じ列を見る |
もし全部を $A$3 $B$2 にしていたら、全部のセルが同じ値になります。逆に $ を1つも付けなければ、右や下にコピーした瞬間に全部ズレます。
「何を動かしたいか」から逆算して $ を置く、という考え方です。
実務で $ が必要になる場面
- 1か所に書いた値を、全行で使うとき
消費税率、為替レート、共通の単価、手数料率。「設定値」を表の上のほうに1つ置いて、全行から参照する形です。
- 別の表(マスタ)を参照するとき
XLOOKUPやVLOOKUPの「探す範囲」は必ず固定します。固定しないと、下にコピーした分だけマスタの範囲がズレていきます。
- 集計の範囲を指定するとき
SUMIFSやCOUNTIFSの範囲も同じです。
$を付けないと、下にコピーするほど範囲が短くなります。 - 縦横に広がる集計表を作るとき
上のCOUNTIFSの例です。
$A3とB$2を使い分けます。
2つ目と3つ目は、これまでの記事で マスタ!$A:$A や 明細!$D:$D と書いてきた理由そのものです。
よくあるつまずき
下にコピーすると、だんだん合計が小さくなる
=SUM(B2:B10) のように範囲を固定していません。
下にコピーすると B3:B11、B4:B12 とズレていきます。=SUM($B$2:$B$10) と固定してください。
全部のセルが同じ値になった
固定しすぎています。$A$3 のように全部固定すると、
どこにコピーしても同じセルを見にいきます。
動いてほしい方向の $ を外してください。
$ は「安全だから全部付ける」ものではありません
全部固定した式は、コピーしても壊れませんが、コピーする意味もなくなります。
1つずつ手で直すことになり、かえって手間が増えます。
「この式を、どっち方向にコピーしたいか」を先に決めてから $ を置いてください。
確認のしかた
$ を付けたら、必ず2か所で確かめてください。
- 一番上の行で、手計算と合うか
ここが合っていなければ、式そのものが違います。
- 一番下の行で、数式バーを見る
参照先が意図どおりか確認します。
$B$1が$B$1のままなら正解。B10のように動いていたら固定できていません。
途中の行ではなく、一番下を見るのがコツです。ズレは下にいくほど大きくなるので、一番下で正しければ全部正しいことになります。
今日やってみること
- 式をコピーしている表を1つ開く
見積書、集計表、単価計算。どれでも構いません。
- 一番下の行の式を、数式バーで見る
一番上の行の式と見比べて、動いてほしくないところが動いていないか確認します。
- 動いていたら、そこに F4 で
$を付ける上の行から入れ直して、下までコピーします。
- 一番下でもう一度確認する
これで完了です。
この確認を習慣にすると、「なぜか合わない」がほとんど起きなくなります。
次に読むとよい記事
$ は、ここまでの記事すべての土台になっています。
- マスタの範囲を固定して表引きする → XLOOKUP関数の使い方
- 集計の範囲を固定して合計する → SUMIFS関数の使い方
- 縦横に広がる集計表を作る → COUNTIFS関数の使い方
- 古いExcelでの表引きと範囲の固定 → VLOOKUP関数の使い方
- 関数の一覧から探す → 事務でよく使うExcel関数まとめ
「昔から使っている集計ファイルの数字が、どうも怪しい」という場合、原因はこのあたりにあることが多いです。実際のファイルを拝見すれば判断できます。現状のヒアリングと課題整理は無料です。
この記事について
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