「月次の会議資料を作るのに2日かかる」という話は、業種を問わずよく聞きます。
このとき多くの場合、相談は「Excelを速くしたい」「マクロを組みたい」という形で来ます。ですが実際に作業を横で見せてもらうと、時間を食っているのはExcelの操作そのものではありません。数字の出どころが複数あって、それを毎回つなぎ直していることです。
時間はどこで消えているのか
ある製造業の月次資料づくりを、工程ごとに分けて計ってみると、だいたいこういう配分になります。
| 工程 | かかる時間の感覚 |
|---|---|
| システムからCSVを出す | 数分 |
| CSVをExcelに貼り、形を整える | それなりに |
| 手入力のExcelから数字を拾って突き合わせる | ここが一番長い |
| 合わない数字の原因を探す | ここも長い |
| グラフと体裁を整える | それなりに |
| 印刷して配る | 数分 |
「突き合わせ」と「原因探し」で時間の大半が消えます。そしてこの2つは、Excelの操作が速くなっても短くなりません。
原因は「同じ数字が2か所にある」こと
なぜ突き合わせが必要になるのか。答えは単純で、同じものを表す数字が2か所以上にあるからです。
- 販売管理システムに入っている出荷数量
- 現場が手で付けている日報の出荷数量
この2つは本来同じはずですが、入力のタイミングも、締めの考え方も、担当者も違います。だから毎月ズレます。そしてズレるたびに人が調べます。
ここを直さずにマクロを組むと、「ズレたまま高速に資料が出てくる」という一番まずい状態になります。数字が違うことに誰も気づかなくなるからです。
直す順番
順番を間違えなければ、この手の作業はかなり短くできます。
1. どの数字を「正」とするか決める
一番大事な工程です。出荷数量はシステムを正とする、原価は経理のExcelを正とする、というように、項目ごとに正を1つだけ決めます。
技術の話ではなく、社内の合意の話です。ここが決まらないまま先に進むと、あとで必ず戻ってきます。
2. 正でない方を「入力」から外す
正と決めなかった側は、集計に使わない形にします。現場の日報が必要なくなるわけではありません。日報は日報として残しつつ、月次資料の集計元としては使わない、と役割を分けるということです。
3. 手入力が残る部分を、入力専用シートに隔離する
どうしても手で入れる数字は残ります。それは仕方がないので、入力する場所を1枚のシートに集めます。あちこちのセルに直接打ち込む形をやめるだけで、確認する場所が1か所になります。
4. ここで初めて自動化する
正が決まり、入力場所が1か所になっていれば、あとの集計・転記・体裁づくりは機械の仕事です。VBAでもPower Queryでも構いません。ここまで来ていれば、どの道具を使っても動きます。
順番を逆にすると、作った仕組みが「今月だけ動くもの」になります。翌月に数字の出どころが変わり、また手作業に戻る。これが自動化がうまくいかない一番よくある形です。
「担当者が休むと止まる」も同じ話
月次資料が属人化するのは、その人が特別なスキルを持っているからではありません。どの数字を信じるかという判断を、その人が毎月頭の中でやっているからです。
判断が頭の中にある限り、手順書を書いても引き継げません。逆に、正をルールとして決めてしまえば、判断そのものが不要になります。属人化の解消は、マニュアルづくりではなく、判断をなくす作業です。
まずやってみること
大がかりな話に聞こえるかもしれませんが、最初の一歩は小さくできます。
- 次の月次資料を作るとき、工程ごとに時間を計る(スマホのタイマーで十分です)
- 一番長い工程を1つだけ書き出す
- その工程で「どの数字とどの数字を突き合わせているか」を書き出す
この3つが分かれば、直すべき場所はほぼ決まります。計測していない状態で自動化を始めるのが、一番遠回りです。
自社の月次資料でどこから手を付けるべきか整理したい、という段階のご相談もお受けしています。現状のヒアリングと課題整理は無料です。
この記事について
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